白い猫の来た道

日々つれづれ

人のアイデンティティを笑うな

以前、Twitterであるツイートが回ってきたのを見て、あーと思ったことがあります。

ある病みアカウントが載せている大量の薬の写真が、精神薬や睡眠薬などではなく、アレルギーや風邪薬であることを嗤う内容でした。

 

漫画家の遠藤淑子さんの『マダムとミスター』という作品に、主人公のグレースが学生時代、1番を取る頭の良さがあるのに、ずっと2番に甘んじているという話があります。

なぜかというと、ずっと1番を取り続けている同級生が、1番であることを自分のアイデンティティにしているからです。

 

誰かが大切にしているアイデンティティを不用意に奪う必要はない。

 

今手元に本がないので細かいところは違うかもしれませんが、グレースがぽつりと呟くそんなセリフが今でも心に残っています。

 

誰かが、自分が自分であるために大切にしていることは、他人から見たら滑稽なことであるかもしれません。

でも、ほんの些細なことが、ちいさな何かが、その人を支える柱となっていることがある。

それを嗤うというのは、ひどく残酷なことだと思うのです。

 

遠藤淑子さんの作品は『マダムとミスター』以外もとにかくおすすめ。

ギャグ漫画のようなノリの中に挟まれる、静かで力強いセリフが心に刻まれますよ。

 

 

マダムとミスター 1 (白泉社文庫)

マダムとミスター 1 (白泉社文庫)