人のアイデンティティを笑うな
以前、Twitterであるツイートが回ってきたのを見て、あーと思ったことがあります。
ある病みアカウントが載せている大量の薬の写真が、精神薬や睡眠薬などではなく、アレルギーや風邪薬であることを嗤う内容でした。
漫画家の遠藤淑子さんの『マダムとミスター』という作品に、主人公のグレースが学生時代、1番を取る頭の良さがあるのに、ずっと2番に甘んじているという話があります。
なぜかというと、ずっと1番を取り続けている同級生が、1番であることを自分のアイデンティティにしているからです。
誰かが大切にしているアイデンティティを不用意に奪う必要はない。
今手元に本がないので細かいところは違うかもしれませんが、グレースがぽつりと呟くそんなセリフが今でも心に残っています。
誰かが、自分が自分であるために大切にしていることは、他人から見たら滑稽なことであるかもしれません。
でも、ほんの些細なことが、ちいさな何かが、その人を支える柱となっていることがある。
それを嗤うというのは、ひどく残酷なことだと思うのです。
遠藤淑子さんの作品は『マダムとミスター』以外もとにかくおすすめ。
ギャグ漫画のようなノリの中に挟まれる、静かで力強いセリフが心に刻まれますよ。
花のお宅に
先日、あるご年配の方からご自宅へ招待していただきました。
庭には、色とりどりのチューリップ。
並んだ鉢にたくさんの花。
植えられた木にも美しい花が咲いていました。
玄関を入れば、至るところにお花が飾られています。
お家の中も外も花で囲まれているお宅です。
よく手入れされた庭と、ご主人がこだわって建てられたお家。
その方は数年前にご主人を亡くされていて、1人では広い家の維持が大変なので別のところに引っ越されるそう。
「きっとこの眺めも最後だから、たくさんの方に見てほしいの」
そうおっしゃっていました。
伺ったお話から、ご主人と、ご主人と建てられたこのお宅をどれだけ愛しているかというのが伝わってきました。
門から見た、花に囲まれたお宅の美しさは忘れられそうにはありません。
誰かを、何かを、心から愛する人生は、いとおしく、素敵ですね。
大切なものを見せていただいて、ありがとうございました。
長く続けること
私はピアノ教室を主宰しているのですが、そこが今年の4月で丸10年を迎えました。
10年は、長いような。それでいて短いような。
それでも、なんにしても流れの速い昨今のことですから、長く続いている方だと思います。
ピアノを始めてからは30年以上が経ちますし、何かを長く続けていることを褒められることが多いです。
でも、私自身はフットワークが重く何事にも慎重なので、何かに新しく挑戦するのに時間がかかります。
だからいろんなことを次々と新しくやっていく人というのをいつもうらやましく思っているのですよね。
そんな折、教室を始めて10年をすぎた今年、仕事にまつわることでようやく理解に至った出来事がありました。
その内容は専門的なことなのでここでの説明は避けますが、長く続けているからこそたどり着いた答えでした。
積み重ね続けていないとわからないこともあるなと実感。
新しいことに次々挑戦する人も素晴らしいですが、こうやって何かを長く続けているということも素晴らしいことだなあと自画自賛したのでした。
もちろん、嫌なことを「石の上にも3年」みたいに長く続けなければいけない必要などどこにもなく、つらかったら早く別の道に進む判断をするのは大事なことです。
一つに絞ることなく興味のあることをいくつも並行してやるというのも楽しいことですね。
どんなものでも、長く続けていると何かしらたどり着くものがあるとわかったのは、得た答えそのものよりもよりも大きな収穫でした。
見ていてくれる人
私がやっている「よむひと」という本の活動で、今度カフェではないところで読書会をするのですが、その会場の担当の方にFacebookでイベントのシェアをしていただきました。
それがね、とっても丁寧な紹介文で。
「イベントをシェアしてもいいですか?」とメッセージが来たときに、軽い気持ちで「ぜひお願いします😊」と返したのですが、まさかイベントだけではなく「よむひと」のサイトまできちんと読み込んで紹介していただけるとは思ってもみなかったです。
大抵は、簡単な紹介文と共にイベントページがシェアされることがほとんどなので(それだけでもありがたい)。
本気で感動してちょっと涙まで出た。
最近、なんだかいろんなことがうまく回っていなくて、頑張っても空回りで、焦ったり落ち込んだりしていたのですが、そんな場合じゃないなと思いました。
見ていてくれる人はきちんといる。
焦ったり落ち込んだりする前に、イベントのシェアをしてくれた人のように、目の前のことにもっと愛情を持って誠実に携わろうと思いました。
ほんとに嬉しかったなあ。
ありがとう、さくらちゃん!
(ここは見ていないので、今度会ったときに伝える!)