白い猫の来た道

日々つれづれ

「正しい家計管理」で家計を見直してみた

f:id:nekomaru44:20170208215555j:image

昨年末に読んだ、林 總(はやし あつむ)さんの「正しい家計管理」。
2014年の読みたい本リストの中にあったものの、どこで知ったのか覚えてなかったのですが、この本をリストに入れた当時の自分にグッジョブと言ってあげたい良書でした。


突然ですが、私は個人事業主として働いています。
安定とは程遠いところにあります。
ですから、わりとお金の管理に関してシビアにやっているつもりだったのですが、2年ほど前に1人暮らしを始めて以降、使う方に偏っているなあと感じていながらそのままにしていました(全然シビアじゃない)。
1人暮らしを始めるまでは、1人暮らしの準備費用、車の購入など、まとまったお金を用意するために、きっちり予算を決めて生活していたのです。
念願だった1人暮らしを始め、なんとかマイナスにならずに暮らしてはいるものの、気付けば収支の詳細があやふや。
お金の見直しをきちんとしないといけないなと思っていたタイミングでこの本に出会いました。


「正しい家計管理」は、企業などの管理会計の専門家である林總さんが提唱する、家計管理の方法を記した本です。
大きな特徴は次の2点。
1、節約ではなく、価値あるものにお金を使う
2、削るのではなく、価値をゼロから作り上げる

家計を扱うお金の本の中では節約の取り扱いがとにかく大きいものですが、本書は違います。
まず、自分が、自分の家族が、何に価値観を置くか。それを明確にします。
「一般的」「平均」というものと距離を置き、自分が価値を置くものに優先的に予算を割り振り、自分たちが定める目標のために貯蓄できるシステムを作る。
それは、どう生きたいかを自らに問う行為でもあります。


よく、それぞれの年代の平均貯蓄額や、お金を貯める人はこういう予算配分で暮らしている、など特集されていますが、一人一人全く違う人生を送り、それぞれの価値観の元で暮らしているのだから、参考にする程度で振り回されてはいけないんですね。
「正しい家計管理」では、家計のシステムを作るために、詳細な説明が加えられながら、現在の家計の実態を把握する→予算を立てる→見直す、を行なえるよう筋道立って章が作られています。
本の内容に沿って私もやってみました。

 

①家計の実態を把握する
まず、現在の家計の実態を把握します。
自分がどれくらいの財産を持っているか。年単位での収支はどうなっているか。
ノートを2冊用意し、1冊は財産目録、1冊は予算・収支を書き込んでいきます。

f:id:nekomaru44:20170208220135j:image

左が財産目録、右が予算・収支。


この「正しい家計管理」のポイントは、アナログな手書きです。
林總さんはITを活用した管理会計のシステム化を専門としていますが、それでも手書きがいいと言います。
パソコンでの管理はとても簡単ですが、金銭感覚がバーチャルになりがちだそうです。
手書きだと、出て行くお金、手元にあるお金の感覚が、しっかり身につく。
収支の計算は家計簿ソフトやアプリでもOKですが、最終的な結果は手書きでノートに書き写すといいそう。

f:id:nekomaru44:20170208220558j:image

私の手書きノート。
ふむふむなるほどー。


ではまず、財産目録を作っていきます。
財産…
財産というと、何やらものすごい額の貯金やら不動産やら宝石やらを思い浮かべる私。
そのイメージはひとまず置いといて。
同じ財産でも、プラスの財産とマイナスの財産に分かれます。
プラスの財産とは、お金及び売ればお金に変わるもののこと。通帳にある預金や、財形貯蓄、株式、不動産、手元にある現金がそれにあたります。
マイナスの財産とは、ローンなどの残高。
プラスの財産は大雑把にしか把握していなかったので、ここで初めて自分が実際に持っている財産を把握することに。
おお、思ったよりある…かな?でも、やっぱりもっと欲しいなあ。
そして、もうほとんど使っていなかったネット銀行の口座があったことを思い出し、解約することにしました。すっきり。
マイナスの財産は、大学の奨学金の返済分です。今年で完済するのであと少し。
それぞれ書き込んだら、プラスの財産からマイナスの財産を引きます。それが、持っている純資産です。
この純資産を、毎月1円でもプラスにしていく仕組みを作るのが「正しい家計管理」の方針。
実際に数字に書き出してみると、感動しますね。これが…私の…純資産…(じーん…)みたいな感じ。
頑張って増やそうと思えます。


次に、昨年の年間収支実績表を作成します。予算を立てる時の目安にするためです。

f:id:nekomaru44:20170208224414j:image

本に載っている表をコピーすると使いやすいです。私は項目がかなり違ったため、自分で表を作りました。


自分がどのくらい年間で使っているのかわかれば、具体的な予算が立てやすくなりますね。
私は確定申告をする関係上、全ての収支をノートに記入しています。
でも、記入するだけでしたし、確定申告に必要な経費の割り出しではなく、生活費を年間でどのくらい支出しているか計算したのは初めてでした。
項目ごとに計算していくたびにドキドキする気持ち…
全部の支出を計算し終えたとき、昨年1年間の支出と、昨年1年間の収入の額が1万円も違わない額だったことに思わず叫びました。
ひ、ひえええええ〜〜ぴぴぴぴったりだ〜〜
昨年は仕事をセーブしていたので、収入も少なめ。

赤字にならなかっただけでも良しとする?
いやいや、やっぱり少しは貯金しておかなくちゃダメじゃない?
のせめぎ合いでした。


項目ごとの支出を見てみると、管理不能支出の中の仕事費と、管理可能支出の中の美容費が多いことに気付きました。
ちなみに、管理不能支出とは、家賃や保険、ローンなど、定期的に必ず出ていくお金のことです。
反対に、管理可能支出は、食費や美容費、衣料費、遊興費など、支出額がその都度増減するもの。
私は実家の一室を使って仕事をしているので、実家にお金を入れています。生徒用の駐車場を借りているので、その分の支払いもある。勉強のために今もレッスンに通っています。
これらの額が結構多いのですね。
でも、削るのは難しいなあ必要だからなあ…うーむうーむといったところ。
美容費は、髪のカラーリングをしている関係で美容院代が多くなっていました。
それと、美容が好きだから、細々手入れをしようとすると、ひとつひとつは額が大きくなくてもそれなりになるのですね。
ここも再考しなければならないようです。


ほかは、まあこんなものじゃろうか、いや、むしろ頑張ってやりくりしてるよなあと自画自賛の額となっておりました。


次に、特別支出の算出。
毎月固定で出ていくもののほかに、1年のどこかでどかんと支払うものがありますね。車検、旅行、家電、ご祝儀、贈り物、などなど。これが、実はとても大きいのです。
試しに、今の段階で予想できる、今年の特別支出を書きだしてみたら、予想以上の額に。
2回目のひええええええです。
これもひとつひとつ見直しつつ、毎月の家計に組み込んで予算化し、プールしていく必要があります。
実は、私は月収に増減があるため、額が大きい特別支出に関しては、今までも少しずつ貯めてから支払うようにしていました。
そうしないと、収入が少ないときに支払う必要があるとき、貯金を切り崩さないといけなくなりますからね。
でも、1年の総額で考えたことがなかったので、その額の大きさに正直たまげました。かなり出て行くね!
この時点で、これからやる予算立てに暗雲が立ち込めてくるような気持ちがしたものです…。

 

②予算を立てる
さあここからが最も大事なところです。1年間の収入予算、支出予算を立てていきます。
予算を立てなければ、何にどのくらいお金を使っていいのかわからないまま、どんぶり勘定でやっていかなければなりません。
それでやっていける人はいいんじゃないの?とぼんやり考えていた私。しっかり本書で、それはいかん、と教育的指導を受けました。
引用してみますね。

 

どんぶり勘定で家計の実態が見えていないのは、非常に恐ろしいことです。収入が低いことよりも、実態が見えていないことのほうが怖いと私は思います。
お金を使う時の判断基準となる「ものさし」を持てないと、なんとなくお金を使ってしまう。そうすると、本当にほしいものが手に入らず、自分の人生の夢や目標が達成できなくなってしまいます。
そもそも、本当に欲しいものがわからない、人生の目標そのものがあいまいだからこそのどんぶり勘定ともいえます。
どんぶり勘定をやめると、気持ちよくお金が使えるようになります。同時に、支出を我慢するときもストレスがなくなります。お金を使うにせよ、がまんするにせよ、それが自分と家族の夢につながっていることが実感できます。
どんぶり勘定のままでは、お金にまつわる不安やストレスから解放される日は、永遠にやってこないのです。(一部省略致しました)

 

ここらへん、いろんな意見があると思います。今、生き方やお金に関する価値観は、どんどん多様化していますものね。
ちなみに、私の母は昔からかなりどんぶり勘定でやっているようです。それでもなんとかやっているし、その方がおおざっぱな母には合っているようです。たぶん、細かく予算化とかそっちの方がストレス!とか言いそう。
私は、林さんが言うように予算を立てた方が気持ちよくお金が使えます。予算をきっちり守るというよりも、予算が目安になるから、今月はこの項目ではあとこれくらい使えるな、とわかって買い物の計画が立てやすいのです。せっかく買うなら、気持ち良くにこにこ買いたいじゃないですか。使っちゃって大丈夫かな?と不安になるのはもったいない。


予算を立てる際に大事なのは、『過去(昨年の収支実績)を参考にしながら未来をシミュレーションし、あなたが計画した将来の姿を現金収支で表現すること』だそうです。
これから先1年、どう生きていきたいか?やりたいことは?1年ではなく、3年後は?5年後は?
その計画に沿って、限りある収入を自分にとって価値あるものに振り分けていく。
現実と夢を融合させる試みですね。うむうむ、楽しそう。

 

さて、それではまず1年間の収入予算を立てていきます。
会社員の方であればボーナスや臨時収入など諸々あるのだと思いますが、私は自営業なので、月々の収入のみです。わかりやすい。
フリーランスや自営業者は収入に増減があるので、予算を立てる際は少なめの設定にした方が良いそうです。

 

次に、支出の予算を立てていきます。
ここでも1年単位で予算を立てるように本では言われていますが、私はひとまず1ヶ月で予算を立ててみました。林先生ごめんなさい。
1年だと額が大きすぎて現実味がなかったのです。


まずは管理不能支出を書き出していきます。
毎月必ず出ていくお金。預金もこちらに含めるそうです。余ったら預金、じゃいけないんですね。預金を管理不能支出にがっちり固定することが、貯蓄システムにとっては肝心なことです。
その次に、水道光熱費など、毎月出ていくけれど増減があるもの。
もうすでにこの時点でかなりの支出予定となっています。うわわわ。
でも、おおよその家庭が管理不能支出の割合が大きく、管理可能支出は全体の2割ほどなのだそうです。ほっ。
慌てたりほっとしたりと忙しい私。

 

管理不能支出を書き出したら、残りのお金で管理可能支出の予算を立てます。
ここは、個人の生活が一番出るところだと思います。
暮らしの中で何を優先させて予算を配分させていくか、個人の価値観で決めていくところです。
食費は収入の何割、家族での遊興費は1回いくら、と世間一般の平均に合わせるのではなく、自分たちが思い描く生活をそのまま予算化します。
私は、食費、車、仕事、旅行、ほしいもの、服飾、書籍、日用品、化粧品、と分けて予算配分しました。細かいね!
全てその月で使い切るのではなく、車、仕事、旅行、ほしいもの、服飾は、必要になる額が大きいので一旦それぞれ封筒にプールしておき、必要になったらそこから出す方法を取ります。特別支出も各項目ごとの費目から出すことに。
食費、書籍、日用品、化粧品は、1ヶ月使い切り。余ったら預金に回すようにします。
費目がすごく細かいのは私なりのやり方で、ほぼ今までのお金の管理方法と一緒です。林先生は、費目の数は5つ以内を提唱しています。費目の数が多すぎると管理が面倒になるから。
でも、私は費目が少ないとかえってごちゃごちゃになるような気がして、細かく分けています。
ここらへんはまた臨機応変に変えていく予定です。

 

それにしても、予算がとにかくきつきつ。
昨年多かった美容費は、まず美容院でのカラーをセルフにすることにして大幅に削ることにしました。
基礎化粧品も、今使っているラインよりも安めのものに。メイクはしばらくドラッグストアのプチプラ用品にしていこうと思います。
ほかにも多かった管理不能支出の仕事費は、当面そのままに。ここはやっぱり必要なので。管理可能支出の方での仕事費の見直しをしていこうと思います。
そして、今年は何回か旅行を計画しているので、旅行費の予算を多く取ることにしました。楽しみー
あとは、収入を増やしていかなければならないなと痛感しました。
やりたいこと、将来のことを考えると、もっと収入が欲しいなというのが正直なところ。
お金はやはり、大事なものです。
仕事を根本的に見直すことに決めました。

 

予算オーバーしたり、私のようにきつい場合は、管理不能支出の見直しをするべきだと本では書かれています。
しかも、腹をくくってやるようにと。ここらへん、林先生厳しいです。
家賃、カードの年会費、スマホのプラン、車、サプリなどなど、本当に自分にとって必要か、妥当な額か、深く深く見直すこと。
自分にとって必要であれば、ほかの人にとって不必要でも全然構わないんですよね。でも、ひつようかなあ…?とすぐに頷けないものに関しては、再考の余地があります。
私は、デパートのカードをひとつ解約することにしました。
スマホも、春頃に一度ショップに行ってプランの見直しをしようと思っています。
見直すものはまだまだほかにもありそう。ひとつひとつ、本当に必要かどうか考えてみようと思います。

 

この予算立てとシステム作りは一度やればOKではなく、自分たちの生活のペースに合ったものを作るまでに、時間がかかります。
やっていくうちに、この費目は少なすぎた、こちらは多すぎた、というものが必ず出て来ます。
また、生活は不確実性を伴うもの。予測していなかった出費も出て来ます。
予算を確定していくまでのポイントやアドバイスも、本には細かく書かれていますので、これから参考にしていく予定です。

 

さて、ここでひとまず①家計の実態を把握する→②予算を立てる、までできました。
そのあとの「③見直す」はこれから数ヶ月、1年単位でやっていきます。
また、本には、預金の管理や、10年単位での中・長期の家計管理のポイントも書かれています。ここも参考になる点がいっぱい。
もう少し預金を増やしたら、もっと本を読み込んで実行していこうと思います。


そして、この本には、スタッフが実際に「正しい家計管理」を体験した記録も載っているんですね。

f:id:nekomaru44:20170208221534j:image
家庭がある方、独身がある方で4通り。皆さん四苦八苦されていて、とてもリアルです。

こう言ってはなんですが、皆さんの試行錯誤に、正直安心しました。私だけがじたばたしてるような気持ちになっていたものですから…
お金の使い方はほんと千差万別ですね。奥深い。


今回「正しい家計管理」の本に沿って家計を見直してみたのですが、私は、お金のことを考えながら、同時に、どう生きたいかということを常に考えていました。
お金とどう付き合うかは、その人の人生観を表していると言っても過言ではありません。
予算立てで苦労したり、自分の収入の少なさにちょこっと落ち込んだりしながら、それでもお金について考えるのはとても楽しいことでした。
自分のやりたいことを実現していくためにお金を貯める計画を立てることに、ただただわくわくしたんですね。
幸せのために、お金を大切に使う。
それを、試行錯誤しながらやっていこうと思います。

 

 

正しい家計管理

正しい家計管理

 

 

 

寄り添いながら書く

f:id:nekomaru44:20170204152507j:image

若松英輔さんの読書会について書いたブログをTwitterでシェアしたら、若松さんご本人の目に留まり、なんとTwitter上でリプライまでいただいた。

 

「ゆっくり、ほんとうに感じていることに寄り添いながら書いてみてください。」
という言葉が添えられていた。

 

ほんとうに感じていることを、そのまま書くというのは、とても難しい。
誰かに見せることを前提に書いているものは、どこか他人の目線を意識して飾ってしまったり、小さな見栄を混ぜてしまったりする。
自分が何をほんとうに感じているのか、わからないこともある。
わかっていても、言葉で的確に表現できないこともある。

 

それでも、寄り添うことはできると思った。
自分が感じていること、心に、寄り添うことはできる。
人に誇れる自分でなくても、人に言えないようなことを感じていたとしても、寄り添うことはできる。

 

それを、拙くてもいいから、少しずつ、丁寧に言葉にしていけばいいと思った。

 

折しもこのブログを始めたばかりで、書くことにようよう自分のペースで向き合いたいと思っている時にいただいた言葉だった。
これから、ずっと大事にしていきたい。

 

↓読書会のレポはこちら

1月に読んだ本

1月に読んだ本。

振り返ってみると、どれもとても濃ゆい…

1月は密度の濃い読書ができましたね。

1か月に10冊くらい読むのがちょうどいいペースなのかなと思いました。

本当はもっと読みたいのだけど、1冊1冊とちゃんと向き合いたいし、読書のほかにもやりたいことがあるし。

読了と同じペースで読みたい本のリストが更新されていきます。嬉しいことです。

 

2017年1月の読書メーター 読んだ本の数:13冊 読んだページ数:3411ページ ナイス数:118ナイス ハリスおばさんモスクワへ行く (fukkan.com)ハリスおばさんモスクワへ行く (fukkan.com)感想 お馴染みロンドンの通いのお手伝いさんのハリスおばさんが、今度は親友のバターフィールドおばさんと共にモスクワへ行きます。イギリスとロシアの間の恋のキューピッドとなるために。冷戦時代の話なのでロシアの描かれ方はかなり辛辣ですが、モスクワを舞台にハリスおばさんとバターフィールドおばさんが大活躍。本書が最終作なのは残念なことです。どこにいても自分らしくあること。愛する人の喜びのために行動すること。いつも好奇心いっぱいで夢見ることをやめないハリスおばさんは、私たちに大切なことを教えてくれるのです。 読了日:1月3日 著者:ポールギャリコ
若松英輔エッセイ集 悲しみの秘義若松英輔エッセイ集 悲しみの秘義感想 人は、どうにもならない人生の苦しみに直面したとき、語るべき言葉を喪うことがある。身を切られるような哀しみに心が焼かれ、生きるよすがさえ失いかけながら、それでも生きようとするとき、人は魂の奥深くにある「言葉」という光に出会うことがあるのだ。本書は、批評家の若松英輔氏の25編のエッセイからなり、哀しみを通じてしか触れることのできない珠玉の言葉がそこに並んでいる。哀しい、愛しい、美しい言葉たちは、しんしんと降る雪のように静かに心に積もっていく。ひがしちかさんの美しい装画も素晴らしい、魂に寄り添う一冊だ。 読了日:1月7日 著者:若松英輔
荒神荒神感想 江戸の昔、東北小藩の山村を一夜にして壊滅させた怪物と、北の民たちの戦いを描いたお話。開始3ページ目にして鳥肌の立つ始まり方でした。物語に引き込まれては息ができなくなりそうで小休止、を繰り返しながらも一気に読了。人の業と恐ろしさ、そして強さ優しさが伝わってくる傑作でした。 読了日:1月8日 著者:宮部みゆき
甘い、甘い、甘くて甘い 服部みれい詩集甘い、甘い、甘くて甘い 服部みれい詩集 読了日:1月10日 著者:服部みれい
精霊の守り人 (新潮文庫)精霊の守り人 (新潮文庫)感想 名作初読です。ページをめくると、そこはすでに物語の舞台・新ヨゴ皇国。作者により緻密に作り込まれた豊かな世界観の中で、女用心棒バルサと皇子チャグムが繰り広げる冒険に魅せられました。優れた児童文学は、大人ももちろん楽しめるのですね。シリーズを読み進めていこうと思います。ドラマの方も見てみたいな。 読了日:1月13日 著者:上橋菜穂子
マルグリートの輪舞曲―クラッシュ・ブレイズ (C・NOVELSファンタジア)マルグリートの輪舞曲―クラッシュ・ブレイズ (C・NOVELSファンタジア) 読了日:1月15日 著者:茅田砂胡
おしゃべりは、朝ごはんのあとで。 (ビッグコミックス)おしゃべりは、朝ごはんのあとで。 (ビッグコミックス)感想 駆け出しの漫画家で引きこもり体質の秀良子さんが、美味しい朝ごはんを食べに行くというコミックエッセイ。パリや京都、沖縄、関東近郊に、朝ごはんのために自腹で向かいます。原稿に追われて何も調べずに現地に行ったり、「さわらがすごいさわら味」などご飯漫画っぽくない感想に、笑いがこみ上げます。等身大の書き方とコミカルさもとっても面白い。私も、早起きして美味しい朝ごはんを食べに行きたくなりました。 読了日:1月16日 著者:秀良子
みれいの部屋 ニューお悩み相談みれいの部屋 ニューお悩み相談感想 服部みれいさんが、20代から40代女性の様々なお悩み相談に答えた本。悩みの種類が多く、どれかに自分の状況が重なることがあるかと思います。答えの多くは、冷えとり健康法、ホ・オポノポノ(起こる問題は自分の記憶で、それをクリーニングしていくというハワイ発祥の考え方)、アーユルヴェーダなどなどの考え方が素地になっています。一番心に残ったのは、とにかく自分の人生に集中し、自分を大切にして幸せにすることが何よりも問題解決に繋がるということ。答えは外側にはなく、自分の内側にあるものなのでしょうね。 読了日:1月19日 著者:服部みれい
のぼうの城 上 (小学館文庫)のぼうの城 上 (小学館文庫)感想 石田三成率いる秀吉方2万の大軍と対峙したのは、わずか500の手勢しかいない忍城。城代の盛田長親は、木偶の坊の「のぼう様」と呼ばれている男。小説の文中でも盛んに馬鹿馬鹿呼ばれているのぼう様。人物重視の物語展開は痛快で面白く、何事にものらりくらりののぼう様と、熱い体育会系家臣たちと、義侠心の厚い百姓たちの戦いにわくわくします。いざ下巻へ。 読了日:1月20日 著者:和田竜
羆嵐 (新潮文庫)羆嵐 (新潮文庫)感想 日本の獣害史上最大の被害をもたらした北海道の三毛別羆事件のドキュメンタリー。冬眠できなかった羆(ヒグマ)が開拓村を襲い、2日間で7人(内臨月の妊婦と胎児を含むのがなんとも惨い)の犠牲者が出た事件である。体長3メートル近く、体重380kgに及ぶ羆が簡素な作りの家々を襲い、中でも女性ばかりを狙う。淡々と綴られる悲惨な被害の状況に背筋が凍り、過酷な自然の猛威になす術もない当時の人々と同じく震えがくる。自然とはかくも荒々しいものであると畏怖する内容だった。 読了日:1月22日 著者:吉村昭
追憶のカレン―クラッシュ・ブレイズ (C・NOVELSファンタジア)追憶のカレン―クラッシュ・ブレイズ (C・NOVELSファンタジア)感想 リィとの出会いで自分の意志を持ったシェラ。「自分が何をしたいかも決められなかったら、生きてないのと一緒じゃない?」と言うカレン。自分の人生を自分で生きる子供たちとは正反対に、生きたいように生きられないことを誰かのせいにして嘆くだけ、あるいは憎悪を募らせる大人たちが引き起こした大事件。キャラの立ちまくった人物設定に目を奪われがちですが、骨子のしっかりした物語は、はっとする真理を見事に突いてきます。 読了日:1月23日 著者:茅田砂胡
おしゃべりは、朝ごはんのあとで。 2 (ビッグ コミックス)おしゃべりは、朝ごはんのあとで。 2 (ビッグ コミックス)感想 ひきこもり漫画家が自腹で朝ごはんを食べに行くコミックエッセイ第2弾。今回も、ゆるーい雰囲気と勢いで伝える食レポは健在。香川に北海道に横浜にNYにと食べ歩きます。高級ホテルのビュッフェと、文豪が考案した老舗ホテルの朝食、食べてみたい!早起きして美味しい朝ごはんを食べに行くこと、本気で計画してみようと思います。 読了日:1月23日 著者:秀良子
あたらしい東京日記あたらしい東京日記感想 文筆家で、「マーマーマガジン」という雑誌の編集長も務める服部みれいさんの2011年4月から2012年2月までの日記。ブログもそうですが、人の日記って読むのが面白いのですよね。その人なりの生活が垣間見えるからでしょうか。アーユルヴェーダや冷えとりなどのホリスティックな方法で体を整えながら、バリバリ東京でクリエイティブな仕事をする女性の姿がここにはあります。精神世界にも視点の立脚点を置いているところは色々と参考になります。外側のことは内側の反映、か。みれいさんの日記シリーズ、この先も読んでみようと思います。 読了日:1月27日 著者:服部みれい
読書メーター

若松英輔「悲しみの秘義」読書会 at 北書店 レポ

f:id:nekomaru44:20170202004600j:image

何かを訴え、人を惹きつける演奏がされるとき、客席が、一段も二段も深い静けさに包まれる時がある。
心を向けて、さらにその演奏から何かを聴き取ろうとする客席の意志が、しんとした沈黙として場を覆うのだ。

 

1月30日(月)に参加した、著者の若松英輔さんご本人を交えて行われた「悲しみの秘義」読書会では、そんな沈黙が何度も訪れた。
会場は新潟市中央区の北書店。

f:id:nekomaru44:20170202004739j:image
年明けすぐの北書店のTwitterで今回の読書会が開催されると知り、速攻で申し込んだ。
著者本人が来る読書会なんて!
東京などの首都圏で行われている大きな読書会では時々あるようだけれど、新潟では稀。私はもちろん初めての経験。
若松英輔さんのお名前は、読書仲間がFacebookで本の感想を上げていたのを見て、知っていた。批評家で、文芸雑誌「三田文学」の編集長をされている。とても気になっていた方だし、出ない手はない。
すぐに北書店で、今回の読書会のテーマとなっている本「悲しみの秘義」を購入する。
表紙の鮮やかさが目に飛び込んで来る。美しい。しかも数種類パターンがある。
その場で見比べて1冊を購入した。
とても印象深い表紙なのでどなたが手がけたものだろうと思ったら、ひがしちかさんだった。以前、ほぼ日刊イトイ新聞でインタビューを受けていた日傘作家の方だ。そのインタビュー内容も印象が強いもので、今でも覚えている。

ほぼ日のいい扇子2014 - ほぼ日刊イトイ新聞

↑ひがしちかさんのインタビュー


紙質が独特なもので、素人目にも作りがとても凝っているように見受けられる。出版したナナロク社がとても心を入れて作ったのが伝わって来るようだ。


若松英輔さんの本は初読なので、初めましての気持ちで読み始める。
静謐な文章だった。深々と降り積もる雪みたいな静けさ。そして、そのまま心にしみ込んでいく透明さと優しさ。
読み終えた後に読書メーターに上げた感想は以下の通り。


『人は、どうにもならない人生の苦しみに直面したとき、語るべき言葉を喪うことがある。身を切られるような哀しみに心が焼かれ、生きるよすがさえ失いかけながら、それでも生きようとするとき、人は魂の奥深くにある「言葉」という光に出会うことがあるのだ。本書は、批評家の若松英輔氏の25編のエッセイからなり、哀しみを通じてしか触れることのできない珠玉の言葉がそこに並んでいる。哀しい、愛しい、美しい言葉たちは、しんしんと降る雪のように静かに心に積もっていく。ひがしちかさんの美しい装画も素晴らしい、魂に寄り添う一冊だ。』


やっぱり文章を雪に例えてることに今気付いた。
若松さんは新潟県ご出身だそうで、まったくの私見なのだが、なんとなく、雪が降る地域で育った人と、そうでない人は、表現するものに違いがあるような気がする。
とにかく、なんだかすごい本に年初から出会ってしまった。
一度読んだだけで忘れてしまえるような本ではない。何度も何度も読み直し、その度に新しい発見がある、対話をしていける本だ。一緒に生きていける本だ。
その本を書いた著者が来るなんて、すごい楽しみなのであった。


当日は道が予想以上に混んでいて、ギリギリになりながらもなんとか開始時間前に滑り込むことができた。しかも一番前に座った私。
お客さんは20名以上。椅子の並びからして、トークイベントのような感じ。ふむふむ。どんなふうに進んでいくのか、始まる前からわくわくする。
ツバメコーヒーさんが来ていて(読書会参加費を受付していらっしゃった)、セルフでツバメコーヒーさんのコーヒーが飲めるようになっていた。時間がなかったので飲めなかったのが心残り。

f:id:nekomaru44:20170202005141j:image

若松さんがお話しされた場所。


司会進行は、「悲しみの秘義」を出版したナナロク社代表の村井さん。
なんと村井さん、開始時間を30分遅く勘違いしていたそうで、読書会が始まってからレコーダーの準備をされていたのにちょっぴり笑ってしまった。なんとも親しみやすい方。


今回の読書会は、普段私がよく参加している、数人で車座になってテーマとなる本の感想を言い合ったり、お勧め本を紹介し合ったりする形式ではなく、「悲しみの秘義」に納められた25編のエッセイの中から選ばれた4編をお客さんに朗読してもらい、そのあと若松さんがそれについて話し、お客さんと意見を交換していく方法だった。
現れた若松さんは、小柄でおっとりした雰囲気の方。静かでなめらかな語り口調で、話に自然と耳を傾けたくなる感じ。
まず「はじめに」が読まれ、続いて「低くて濃密な場所」「勇気とは何か」「花の供養に」「文学の経験」の4編が取り上げられた。
村井さんの話によると、「悲しみの秘義」の目次にページ数のノンブルが振られていないのは、ページをめくりながら探して欲しいからとのこと。なるほど。そうすると、意図している以外のものに出会う。計算されていない出会いは、振り返るととても重要だったりする。

f:id:nekomaru44:20170202005341j:image

ページ数が振られていない目次。


本文が朗読されているのを聞いて、なんとも不思議な気持ちになった。
書かれている文章を読むのと、読まれている言葉を聞くのとでは、受け取る場所が違うというか。
文字としての認識と、音としての認識の違いなのだろうか。同じ内容なのに、見せる表情が変わる。

 

1編目に取り上げられた「低くて濃密な場所」は、立候補をして私が読ませていただいた。
今考えると、著者の前で朗読するってすごいことだ。

 

以下、今回は場に集中したくてメモを取らなかったので、読書会で感じたこと、覚えていることを書いていく。
若松さんの話す言葉は静かで沁み通る感じ。
冒頭に書いたように、若松さんの言葉に耳を傾けようとするお客さんの、意志のある沈黙に会場が包まれていた。心地よいやわらかな集中力。
若松さんのお話の端々から、ただただ真摯に生きることと向き合い、言葉と向き合い、人と向き合う。自らの人生からの問いかけに、答えを見出そうとするのではなく、手探りで応えていく。そんな姿を感じ、また若松さんもそのようなお話をされていた。
懸命に生きる人にしか発せられない言葉。言葉にならないけれど伝わってくる何か。
若松さんは、読んだり書いたりすることの前に、とにかく感じることが大事だとおっしゃっていた。言葉にならないことをたくさんその身で感じていく。その上で、「皆さんには書くことをお勧めします」とおっしゃっていたのがとても強く心に残っている。
書くと読むは呼吸のようなもので、読んだら書く、書いたら読む、がいいそうだ。
書くと、言葉が自分のものになる、とおっしゃっていた。
どこかからの引用でも、自ら書き、そこに自分の体験が肉薄することで、言葉が自分のものになるという。
そして、若松さんは、ご自分の仕事を「読んだ人の心に種を植えるのではなく、その人の心に元々咲いている花に光を与えること」とおっしゃっていた。
言葉は誰のものでもないのと同時に、誰かのものにもなりうる。
単に言葉が指し示す意味を超えた先にある、色鮮やかで豊かな世界を垣間見た時、言葉はただの言葉を超えるのかなと思う。


今回の読書会は、「悲しみ」よりも「言葉」の方にクローズアップした内容だった。
悲しみは、人それぞれ、とても個人的なものだからか。
「悲しみの秘義」は表紙と表紙の見返し部分に数種類のパターンがあるのだが、そのことについて他のお客さんが村井さんに質問していた。
本の制作時に数種類のパターンが出るようにして作っているらしい。悲しみは人それぞれの色をしているからだそう。素敵な理由。

f:id:nekomaru44:20170202005857j:image

f:id:nekomaru44:20170202005904j:image

2冊とも同じ「悲しみの秘義」。店頭で迷って決めたい。

もう一冊は友人に贈ろうと思って購入しました。

 

「悲しみの秘義」では、「書くこと」だけでなく、何度も「読むこと」の大事さが書かれている。

『読むことは、書くことに勝るとも劣らない創造的な営みである。作品を書くのは書き手の役割だが、完成へと近付けるのは読者の役目である。』
『読むことには、書くこととはまったく異なる意味がある。書かれた言葉はいつも、読まれることによってのみ、この世に生を受けるからだ。比喩ではない。読むことは言葉を生み出すことなのである。』
これらの文章を読んだ時、はっとした。
私は読書することが好きだけれど、正直に言うと、それが書くことと同じくらい価値あるものだと考えたことはなかった。
読むことがただの受け身ではなく、自主的に意味を見出していく大切なことだとは思っていたけれど、心のどこかで、書くことよりも下に見ていたのだと思う。
読むということの価値、可能性、大切さに触れることができた。
読書会でも、そのことを感想として述べさせていただいた。
とっても緊張してしまってうまく言葉が出てこず、ちゃんと伝わったかどうかは自信がないのだけれど。


読書会が終わり、最後に若松さんからサインをしていただき、握手もお願いした。
書かれる文章と同じく、静かで品のある美しい字だった。

f:id:nekomaru44:20170202010112j:image
こんなに心に残るイベントは、滅多にない。
忘れないうちにこうやってブログに書き起こしたけれど、もしかしたら、細かいことは忘れてしまっても構わないのかもしれない。
忘れてもなお、私の中に何かが確実に残り、共に生き、また新たに出会うと確信している。
それは、「悲しみの秘義」という本と同じだ。

 

なにか、とてつもなく大切なものに出会った。
素晴らしい読書会だった。

 

「読むと書く」若松英輔 公式ホームページ

 

若松英輔エッセイ集 悲しみの秘義

若松英輔エッセイ集 悲しみの秘義

 

 

 

大事にされたら

f:id:nekomaru44:20170130155731j:image

大事にされたり、褒められたら、申し訳なく思ったり焦って否定してしまうのではなくて、ありがとうって素直に受け止めればいいのだなあ。
自分から相手を大事にして、さらに人からの好意を受け止める。
人から大事にされたら、こちらからも大事にしていく。
愛情も、親切も、循環させていけばいいんだね。