白い猫の来た道

日々つれづれ

2017年に読んだ本Best3

2017年に読んだ本の中から、個人的なBest3を挙げてみたいと思います。
読書メーターの記録によると、読んだ本は202冊。
どんどん読みたい本が増えているのでもっとたくさん読めたらなと思うこともあるのですが、多読よりも1冊1冊大切に読もうと思っています。

本の下の感想は、読書メーターに挙げた感想です。

 

『悲しみの秘儀』若松英輔 ナナロク社
人は、どうにもならない人生の苦しみに直面したとき、語るべき言葉を喪うことがある。
身を切られるような哀しみに心が焼かれ、生きるよすがさえ失いかけながら、それでも生きようとするとき、人は魂の奥深くにある「言葉」という光に出会うことがあるのだ。
本書は、批評家の若松英輔氏の25編のエッセイからなり、哀しみを通じてしか触れることのできない珠玉の言葉がそこに並んでいる。
哀しい、愛しい、美しい言葉たちは、しんしんと降る雪のように静かに心に積もっていく。
ひがしちかさんの美しい装画も素晴らしい、魂に寄り添う一冊だ。

若松英輔エッセイ集 悲しみの秘義

若松英輔エッセイ集 悲しみの秘義

 

 

蜜蜂と遠雷恩田陸 幻冬舎
こんなに幸せな読書体験は本当に久し振り。
国際ピアノコンクールを舞台にした小説です。
「私はまだ、音楽の神様に愛されているだろうか?」の帯に胸を痛めながら、読み始めたらブラックホールのように強烈に物語に引き込まれました。
圧倒的な表現力で奔流のように流れる音楽が描写され、コンテスタントたちが背負い立ち向かう才能の光と陰に、心が震えます。
音楽に携わる者としては涙なくして読めず、そこかしこで鳥肌を立てながら読み切りました。
すごい。凄い。それしか言えないほどの面白さ。
実際に観客として目撃したような興奮の読後感です。

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

 

 

『ソロモンの偽証』宮部みゆき 新潮社
映画化もされ、前評判も良い本作。文庫で全6巻。
1990年、クリスマス未明に、中学2年生の男子生徒が学校で転落死した。
自殺として片付けられたものの、関係者に広がる疑念と不穏な動き。
校内でのヒエラルキーに、生まれる理不尽な優劣、子供にはどうすることもできない家族の問題など、思春期特有の閉塞感と焦燥感に満ちていて息苦しかったです。
そうだった。中学生ってそういう時期でした。
事件が事件を呼び、荒れていく展開。
そして結末で明かされる、彼が抱えていた秘密。
彼女が叫んだ嘘。
中学生たちが辿り着いた真実に、総毛立つような、震えるような高揚感で読み終えました。
20年後を描いた書き下ろしの結末に、なんと救われることか(杉村三郎も登場して嬉しいばかり)。
どんどん読み進めたいけど読み終わりたくないという、幸せな読書でした。
本当に、素晴らしかった。

ソロモンの偽証: 第I部 事件 上巻 (新潮文庫)

ソロモンの偽証: 第I部 事件 上巻 (新潮文庫)

 

 

3作品とも読み終えるのがもったいないと思う幸せな読書体験をすることができました。

 

本を読んでいる時間は本の世界に没入しているので、私はここにいてここにいない状態です。
いや、現実に体はここにあるんですけど。
ページを開くとどこでもドアで本の世界に入っていく。そんな感じ。
そうやって本の世界と繋がる時間というのが、私にとってはとても大切です。
そういう時間があるからこそ現実の世界で懸命に生きていこうと思える。

 

言葉で綴られた、世界の多彩さを見る。
読書というのは、とてつもなく面白い体験です。

 

2018年もそんなふうに本を楽しんでいきたいと思います。